コラム

経営理念のあり方を見直して、強い組織をつくり出す!

    Q.  最近、企業の不祥事を耳にすることが少なくありません。同じ経営者として、立派な「経営理念」を掲げる大企業がなぜ?と思う反面、そういった経営理念をないがしろにしてきた結果だとも感じています。企業経営の中で、経営理念を生きたものにするための良い方法があれば教えてください。

    A.
    企業の「基本的価値観」を社内全体で共有することが大切

    なぜ同じような不祥事がこれだけ繰り返されるのかを考えた場合、ご指摘のように、企業内で「基本的価値観がしっかりと浸透していない」という一つの理由が浮かび上がります。

    ここでいう基本的価値観とは、経営者の“思い”や“志”を明文化した「経営理念」や「社是社訓」、「ミッション・ステートメント」などのことを指します。

    これらが企業にとって、どのような意味を持つものかについては、次の二つが挙げられます。

    ①社外に向けて…顧客、取引先、株主、地域社会などの利害関係者に対して、競合他社とは異なる自社の存在目的と存在意義を広く提示する。
    ②社内に向けて…社員に対して、どのような姿勢や考え方に基づいて業務を遂行すべきかを認識させ、社員一人ひとりの力を一つの方向に結集する。

    経営学の大家、コリンズ&ポラスは著書の中で、「利益の追求や目先の事情のために曲げてはならない基本的価値観を掲げ、組織全体に浸透させていくことによって、活力を生み出していくことが、永続的な企業の成長、発展には不可欠である」としています。

    よく企業の会議室や壁に、「社是社訓」や「経営理念」といったものが飾ってあるのを見かけます。しかし、それだけで終わってしまっていたら、『単なる記号』でしかないのです。

    「経営理念」を単なる飾りものにしないために!

    単なる記号で終わらせないために、企業ができることはいろいろあります。その中から、以前、ザ・リッツ・カールトンホテルのセミナーで聞いた事例を一つご紹介します。
    このホテルでは、毎日の朝礼で「ベーシック」と呼ばれるスタッフのための二十項目からなる行動指針を一項目ずつ考えたり、話し合うことを行っているそうです。
    ここで重要なのは、行動指針をただ単に唱和するのではなく、「自分の頭で考えさせる」という点です。確かに、経営理念を「壁に飾っているレベル」から、「唱和するレベル」に高めることは重要です。しかし、唱和しているだけでは充分とはいえません。

    例えば、『顧客満足』という経営理念があるとするならば、
    「先週、お客さまに喜んでいただくために、どのような行動をしたか?」
    「今日は具体的に何をしようと思うか?」
    を一人ひとりに考えさせ、語ってもらうのです。すななち、社員に「考えさせ、さらに自分の言葉で語ってもらうレベル」にまで引き上げるのです。

    何も、初めからリッツ・カールトンを目指す必要はありません。
    まずは、「この程度」というレベルからスタートすることをお薦めします。
    最初から立派なことをやろうとすると長続きしません。持続性が大切なのです。

    知っていることと、実際にできることは全く違います。
    まずは、動いてみましょう。昨日とは違うことを一つだけやってみましょう。
    その行動が、永続的な企業の成長、発展につながっていくに違いありません。

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