経営相談Q&A
Q. 市内で三代続く、○○店を営んでいるのですが、将来的には自分の子どもに事業を継がせたいと思っています。円滑な事業承継に向けて、どのような心構えが必要なのか、良きアドバイスをお願いします。
A. 後継者育成の課題を2つに絞ってご回答します。
経営者にとって後継者育成は、現在の事業経営に匹敵するほど一大事業です。
以前、ある商店街に加盟する経営者にアンケート調査を行ったところ、その悩みの多くが後継者がいないことに端を発していることがわかりました。
経営をともに考える場をつくる
「親子だと何だか照れくさい…」と家庭では仕事の話を一切しない経営者がいると聞きます。しかし、自分が後継者にしたいと思う子どもがいるのなら先ず『経営について一緒に考える場をつくる』ことが肝要です。できるだけ早いほうがいいでしょう。高校生くらいでも決して早くはありません。
経営者としての生きざまや、経営に対する使命感を伝える場合、最も大切なのは経営に対する情熱です。例えば、ある経営者は会社から家に帰ると、決まって自分の仕事がどんなに大変か、その難しさなど、愚痴を家族にこぼしていたと言います。これを聞いて育った子どもが、あえてイバラの道を歩みたいと思うでしょうか?
経営について一緒に考える場を持った時に伝えて欲しいのは情熱です。
情熱は経営者としてリーダーシップを発揮する場合の原動力になります。
それから、同じ悩みを持つもの同士で『同じ釜の飯を食う』体験を通じて経営について一緒に考える場を持つことも大切です。
これは私が若手経営者のための勉強会を運営して感じることですが、20代のうちから異業種の若手経営者同士の勉強や交流を通して得られる体験をつんでいる会社は、事業承継もスムーズに行われています。この体験で得られた知識、交流は、将来、目の前の壁が立ちふさがった時など、壁を突破するために大いなる力を与えてくれるといってもいいでしょう。
後継者育成は説得する必要はない
そして、経営について情熱を伝えていくためには、『現在の事業を繁盛させる』ことが何よりも大切です。これは経営者の責任でもあります。事業を安定させるしくみを築いた後に、事業承継をしていただきたいと思います。
顧客が行列をなす、何かあの店(会社)にいくと賑わいや活気が感じられる、元気になる、楽しい、そして結果として儲かっている・・・こうした事業を行っていれば、経営者が息子を説得する必要はないのです。説得しなければならないという時点で、どこかに問題があると考えた方がいいでしょう。
事業が繁盛するとは、顧客視点で競争優位性があるということです。
例えば、これは私が経営者に尋ねる問いのひとつですが、「同じような商品を取り扱う会社が他にもある中で、お客様はなぜあなたの会社を選んだのか?」ということ。これは自社の強みを明らかにする問いです。
あなたの会社が長年企業経営を行ってきたのなら、その理由は必ずあります。
思い浮かばなければ顧客に聞いてみるのもいいでしょう。この問いに対する答えの中にあなたの事業を繁盛させるアイディア、ヒントが含まれています。
ある会社は、この問いをきっかけに長年の問題をブレークスルーしています。
「強みがなかったのでなく、強みを忘れていただけなのです。」
私も経営相談の現場などで後継者の育成について相談を受けますが、本質的な課題は本日お話ししたところに行き当たります。ご参考にしていただけたら幸いです。