「自立」と「自律」の違い。なぜ企業に自律するチームが必要なのか?
先日、私の書籍を手に取っていただいたお客様から、このような質問をいただきました。
「先生はなぜ“自立するチーム”ではなく、“自律するチーム”という表現を使ったのですか?」
シンプルですが、とても本質的な問いだと思います。
今日はその答えをシェアします。
目次
1.「自立」とは何か?
2.「自律」とは何か?
3.企業に必要なのは「自律するチーム」
4.事例紹介
5.まとめ
「自立」とは何か?
まず「自立」という言葉。
これは一般的に「他人に依存せず、自分の力で立つこと」を意味します。
経済的な自立、生活の自立など、私たちの日常でもよく使いますね。
外部の助けがなくても、ひとりでやっていける状態。
いわば「環境に対して自分で立つ」ことです。
「自律」とは何か?
一方で「自律」とは、「自らを律する」こと。
誰かに言われて動くのではなく、自分の中の規範や理念に基づいて行動することを指します。
つまり「自立」は、外部の助けを必要とせずに立つイメージであるのに対し、
「自律」は、自分の内側に基準を持ちながら、周囲と関わりつつ主体的に行動することです。
ここが大きな違いです。
企業に必要なのは「自律するチーム」
組織は「自立した個人の集まり」であれば十分、というわけではありません。
それだけでは、ときに方向性がそろわず「バラバラな個人の集まり」になってしまうことがあるからです。
本当に望ましいのは、
・共通の理念を基準にし、
・自分で考え、自分を律し、
・周囲と協力しながら成果を出す。
それが「自律するチーム」です。
このようなチームでは、メンバーが意思決定や目標設定、達成方法に責任を持ちます。
結果として組織全体の生産性が高まり、従業員のエンゲージメントやモチベーションの向上にもつながります。
また、主体性が育まれることで、アイデアの交換やコラボレーションが自然に生まれ、組織文化に創造性と革新性が加わっていきます。
事例紹介
事例1.指示待ちからの脱却
ある製造業の現場では、新しいトラブルが発生すると、社員はすぐに上司の指示を仰いでいました。
その結果、上司の机には相談が山積みになり、現場の動きが止まってしまう…。
ここで導入したのが「自律」を促す仕組みです。
現場の判断基準を理念に照らして明確にしました。
例:「安全第一」「品質重視」「納期厳守」
社員一人ひとりが、この理念を日々の行動指針に落とし込み、自ら判断して動くようにしたのです。
すると、上司を待たずに初期対応が進み、報告・相談の内容も「ただの確認」から「自分なりに判断したうえでの相談」へと変化しました。
結果として、組織全体がスピーディに動き出すようになったのです。
理念が判断のよりどころとなったことで、社員は安心して自律的に動けるようになりました。
事例2.理念を行動に変える
あるサービス業の会社では、朝礼で社長が毎日「お客様第一」と唱和していました。
しかし現場では、「どうお客様第一を実践すればいいのか」がわからず、行動につながっていませんでした。
そこで、理念を「行動指針」に落とし込みました。
たとえば「お客様第一=笑顔で3秒以内に声をかける」と具体化。
現場スタッフが共通の行動基準を持ったことで、自然と接客の質が上がり、リピーターも増加しました。
事例3.会議を変える
ある会社の会議では、報告ばかりで意見や提案が出ませんでした。
社員が「間違えたらどうしよう」と考え、発言を控えていたのです。
そこで取り入れたのは「自律的な会議ルール」。
「全員が1つ以上意見を出す」「批判ではなく改善提案を加える」というシンプルな原則を共有しました。
最初はぎこちなかったものの、徐々に活発な意見交換が生まれ、会議から具体的なアクションが決まるようになりました。
ここで大切だったのは、心理的安全性が確保されたことです。
「意見を言っても否定されない」「挑戦的な発言も歓迎される」という安心感が、社員の自律的な行動を後押ししたのです。
経営者の方々からは、
「社員が指示待ちになる」
「理念を語っても浸透しない」
「会議で意見が出てこない」
といった声をよく耳にします。
こうした現象の背景には、「社員が自立していない」こと以上に、「自律できていない」という課題が潜んでいる場合が少なくありません。
だからこそ、私は著書の中で「自律するチーム」という表現を選びました。
まとめ
・自立:外部に依存せず、一人で立つこと
・自律:内面の規範に基づき、自らを律して行動すること
企業が目指すべきは、「自律するチーム」です。
それは単なる個人の独立性ではなく、共通の理念を拠り所にしながら、一人ひとりが判断し、協働して成果を出すチーム。
このようなチームが実現すると、指示待ちではなく「自ら考えて動く社員」が増え、会議や日常業務の中からも前向きな提案や改善が自然と生まれてきます。
結果として、組織全体がスピード感を持って進み、創造性や革新性が文化として根づいていきます。
理念を行動に変えるための第一歩は、まさに「自律」です。
その力が、組織を持続的に成長させるカギになるのです。
御社のチームは“自立”と“自律”どちらに近いでしょうか?
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