私の読書メモ

WHO NOT HOW「どうやるか」ではなく「誰とやるか」

WHO NOT HOW「どうやるか」ではなく「誰とやるか」
ダン・サリヴァン (著), ベンジャミン・ハーディ (著)

WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」

目次
1.「本書からピックアップ」
2.感想
3.この言葉の活かし方
4.まとめ
5.「私の読書メモ」でご紹介した本

 1.「本書からピックアップ」

あなたには、「一人でできることの限界を超えるために必要な、視点やリソース、能力を与えてくれる「誰か」がいるだろうか?
何もかも自分でコントロールしたいと思う優秀な人が、「どうやるか」に集中するのは簡単なことだ。「どうやるか」は自分自身をコントロールすることだからだ。しかし、取り組みを広げ、勝てるチームを作りたいのであれば、自分の弱みを自覚し、チームを信頼することが必要となる。そして、 1.自分でなくても「どうやるか」のほとんどの大部分を充分扱える。
2.自分自身は、情熱を持って最大のインパクトを与えられる分野に全力投球すべきだ。
あなたの注意力とエネルギーは分散させてはならない。徹底的に集中してクリエイティビティを十分発揮できるところに焦点を絞るべきなのだ。

「誰か」はあなたを人間として自己拡張させる存在である。
人間の効力感は、自分一人でできることから生まれるものではない。また「生来の」能力や「個人の」能力に基づくものでもない。
効力感とは、目標達成を可能にするリソースを手に入れることを意味する。自己拡張する方法は、親密な人間関係を構築することだ。すると、その次の段階として、物質的社会的リソースが増え、視点やアイデンティティーが高まっていく。

 2.感想

「できる人ほど陥る罠」を真正面から突く一冊

『WHO NOT HOW』が一貫して伝えている本質は、とてもシンプルでありながら、多くの優秀なビジネスパーソンほど耳が痛いものです。それは、「どうやるか」に答えを出し続けてきた人ほど、成長の天井にぶつかるという現実です。

自分で考え、自分で動き、自分で成果を出してきた人にとって、「どうやるか」は最も慣れ親しんだ思考様式です。自分の努力や工夫でコントロールでき、結果も自分の責任として引き受けられる。だからこそ安心感があります。しかし本書は、その安心感こそがスケールを止める原因だと指摘します。

取り組みを広げ、影響力を高め、より大きな成果を出そうとした瞬間、「どうやるか」という問いは限界を迎えます。時間も注意力も分散し、肝心の創造性や意思決定の質が落ちていくからです。そのときに必要になるのが、「誰とやるか」という問いです。

本書が興味深いのは、「誰か」に仕事を任せることを単なる分業や外注の話として扱っていない点です。「誰か」とは、自分の弱みを補う存在であり、自分の視点や世界の広さを拡張してくれる存在だと定義されています。つまり、他者との関係性そのものが、人の効力感を高める資源になるという考え方です。

効力感は、自分が何でもできると感じることから生まれるのではありません。目標達成に必要なリソースにアクセスできる状態にあると感じられるかどうかで決まります。この捉え方は、リーダーシップやマネジメントを「個人能力論」から解放し、関係性と構造の問題へと引き上げてくれます。


 3.この言葉の活かし方

「自分がやるべき仕事」と「手放すべき仕事」を分ける

本書の考え方を実務で活かす第一歩は、「どうやるか」を考える前に立ち止まり、「これは本当に自分がやるべきことか」と自問する習慣を持つことです。自分が関わる理由が、「自分でやった方が早い」「任せるのが不安」「説明が面倒」といったものであれば、それは手放す対象である可能性が高いと言えます。

一方で、自分が関わるべき仕事とは、情熱を持って取り組め、判断や意思決定の質が成果に直結し、代替が効きにくい領域です。ここに集中することで、注意力とエネルギーは一点に集まり、クリエイティビティが最大化されます。

「任せる」のではなく「組む」という発想を持つ

WHOの発想は、上下関係の委任ではなく、役割の補完関係です。相手に「やってもらう」のではなく、「この人と組めば、自分一人では出せない成果が出るか」という視点で関係性を設計します。

実務では、部下や外部パートナー、同僚に対して、「この人は何が得意で、何に価値を発揮するのか」を明確に言語化することが重要になります。逆に、自分は何が苦手で、どこにエネルギーを使うと消耗するのかも正直に把握する必要があります。

この自己理解が進むほど、任せることへの不安は減り、信頼に基づいた協働が生まれます。結果として、チーム全体の機嫌も安定し、無理な抱え込みや摩耗が減っていきます。

リーダーの仕事を「全部考える人」から「集中できる人」に変える

管理職や経営者の立場であれば、本書の示唆は特に重要です。リーダーの仕事は、すべての課題に答えを出すことではありません。誰がその課題に最も適しているかを見極め、場をつくり、意思決定の質を保つことです。

例えば、現場改善の方法を自分で考え続けるのではなく、「このテーマを任せるなら誰か」を先に考える。すると、リーダー自身は全体の方向性や優先順位に集中でき、組織としての動きも速くなります。

これは、私が提唱する「ごきげんな状態が判断の質を高める」という考え方とも重なります。自分が本来集中すべき領域にいられる状態は、リーダーの余裕とごきげんを支える重要な条件です。


 4.まとめ

『WHO NOT HOW』は、「優秀さ」を手放すことの価値を教えてくれる一冊です。
自分でできることを増やすのではなく、自分一人ではできないことを実現する。そのために必要なのは、「どうやるか」という問いを減らし、「誰とやるか」という問いを増やすことです。

本書が示しているのは、依存ではなく、拡張です。他者と組むことで、人は能力以上の成果を出せるようになります。そしてその関係性こそが、個人と組織の効力感を高めます。

すべてを背負い込むリーダーよりも、集中すべきところに集中できるリーダーの方が、結果として強いチームをつくります。
今抱えている仕事の中で、「これはWHOの問題ではないか」と問い直すことが、本書を活かす最初の一歩になるでしょう。


 5.「私の読書メモ」でご紹介した本

WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」 (Amazonへ)

「どうやるか=HOW」ではなく「誰とやるか=WHO」の視点は、現代型リーダーとして成功するための最も基本的で最も大切な思考法である。
確実に目標を達成させたいなら、「どうしたらよいか」を考えるのではなく「人の力を借りること」に焦点を当てよ!
目標を達成したいと考えたとき、条件反射的に「どうしたらよいか」を考えてはいないだろうか? 会社でも学校でも、チームで取り組む場面も多々あるはずなのに、チームであることで何ができたか、よりも個人として何をやったかに気が向きがちな私たちに、本書は視点を変えるための有益な示唆を与えてくれる。

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