私の読書メモ

出現する未来 U理論で導く自己と組織の変容

出現する未来 ― U理論で導く自己と組織の変容 私の読書メモを紹介します。
著者:ピーター・センゲ、オットー・シャーマー

出現する未来

 目次

出現する未来 ― U理論で導く自己と組織の変容
• 1.本書からピックアップ

• 2.感想
• 3.この言葉の活かし方
• 4.まとめ
• 5.私の読書メモで紹介した本

 1.本書からピックアップ

シナリオをうまく使えば、それまで否定したり、否認したりしていた未来を真剣に考えるようになる。大事なのは、未来を避けられないと思うのではなく、あくまで可能性のひとつとして見ること。

オットーはこう言う。「過去の自分や自分の希望、ニーズから、未来の最善の可能性としての「自己」へと変わる」。ジョセフは、Uの字の底では、「世界で必要とされていることのために、果たすべき役割が自分にあることを発見する」と言う。アーサーはこれを「内なる知」と言った。そして、自分がなすべきことがわかった瞬間に、速やかに動くことができる。

受け身の学習は、もっぱら習慣的な思考を「ダウンロード」するだけであり、自分の心地良い範囲でしか世界を見ようとしない。なじみがあり、信頼できるものとは異なる解釈や行動を軽視する。自分たちの利害を守るために行動する。

集団の進歩を妨げているのは、未来の道を示してくれる誰かが登場するのを待たねばならない、と言う考え方だと思う。でも、Uプロセスで学んできたのは、未来は「英雄」や従来型の「リーダー」が体現するのではなく、集団の中に現れると言うこと。傑出した個人に頼るのではなく、リーダーの新しいあり方を育てること。それがカギになる。

 2. 感想

「未来は予測するものではなく、出現させるものである」

  • この本の核心は、「未来は既にどこかにあるものではなく、私たちが“いまどう関わるか”によって姿を現す」というパラダイムです。それはまるで、“未来がこちらを待っている”かのようです。
  • 通常、未来に対する態度は「不安か楽観か」に偏りがちですが、本書ではそれを超えて、“参加型の未来観”を提示しています。つまり、「未来をどう迎えるか」ではなく、「どんな未来に、自分が関与しているか」。
  • この問いは、個人の生き方やキャリアのみならず、企業のビジョン、社会の制度設計にまで深く根を張るものだと感じました。未来とは“用意された結末”ではなく、“私たちが自ら出現させるもの”──その気づきが、目の前を一変させる力を持っています。

「Uの底で、自分と世界の必然が交差する」

  • オットー・シャーマーが語るように、U字の底で起こるのは「出現の瞬間」です。それは単なるアイデアや戦略のひらめきではなく、「自分がこの時代に存在する意味」と出会う瞬間でもあります。
  • この地点では、「内なる知」が発動し、自分の“過去”や“欲求”からではなく、「世界に必要とされるもの」から行動が引き出されていく。ここには、「内発的動機」や「ビジョン経営」よりもさらに深い、魂に根ざしたリーダーシップの在り方があります。

「リーダーは出現する未来に立ち会う媒介者」

  • この本が提示するリーダー像は、「道を示す英雄」ではありません。むしろ、「未来を共に出現させる空間を耕す存在」、つまり“ホストするリーダー”です。この考えは、従来のトップダウン型リーダー像と決定的に異なります。傑出した個人ではなく、集団の対話、共感、共鳴の中から、未来の兆しが生まれてくる。
  • ここで重要なのは、「私がどう引っ張るか」ではなく、「この場に、どんな問いと聴く力を持ち込めるか」という姿勢です。

 

 3. この言葉の活かし方

「今、私が出現させたい未来は何か?」と定期的に自問する

具体的な活かし方

四半期ごとに「今、私が携わっている仕事が導いている未来は何か?」を内省する時間を設ける
• チームで「5年後にこのチームがどんな影響を与えているか?」を語り合う場をつくる

実践例
経営会議の冒頭10分で「今期の活動が、社会や顧客にどんな未来を出現させようとしているか」を共有し、売上以外の“意味的な成果”に焦点を合わせるようにする。

Uプロセスの実践:観る → 感じる → 手放す → 出現させる → 動く

具体的な活かし方

• 課題に直面した際、「いま起きている現象を観察する」フェーズを意識的に設ける
• 議論が硬直化したとき、「私たちは何を手放すべきか?」という問いを挟む

実践例
業務改革プロジェクトで、「現場で何が起きているかを5人の視点で語るワークショップ」を導入し、問題の“表層”ではなく“構造”に目を向ける場づくりを行う。

「英雄を待つ」マインドを捨て、「今この場に何を持ち込めるか」で動く

具体的な活かし方

「誰が決めるか」ではなく、「自分が何をホストできるか?」という発想でチームに関わる
• 自分の立場や権限にかかわらず、「問い」や「対話の場」をつくる

実践例
中堅社員がチームの方向性に違和感を持ったとき、責任者に代わって答えを出すのではなく、「このまま進むことで、何が起きると感じていますか?」という問いを投げかけ、チーム全体の“内なる声”に触れる機会を持つ。

 

 4.まとめ

『出現する未来』は、戦略書でも自己啓発でもありません。これは、「私たちが“未来の自己”として、今を生きるための実践哲学」といえるでしょう。

• 未来は、あらかじめ決まったものではなく、“可能性のひとつ”として目の前に存在している
• 自分の内面と深くつながり、「内なる知」に触れたとき、人は迷わず動ける
• リーダーとは、未来の兆しが出現する場をデザインする“媒介者”である

この書を手にした今、あなた自身にも問いかけが届いているはずです。
「あなたが出現させたい未来とは何ですか?」
そして、それを実現するために、今どんな“場”を耕し始めますか?

 

 5.「私の読書メモ」で紹介した本

出現する未来

出現する未来 ― U理論で導く自己と組織の変容(Amazon) 

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