一倉定の社長学:経営戦略 私の読書メモを紹介します。
著者:一倉定
目次
• 1.本書からピックアップ
• 2.感想
• 3.この言葉の活かし方
• 4.まとめ
• 5.私の読書メモで紹介した本
1.本書からピックアップ
経営とは「社内を管理すること」ではなく、「お客様の要求を見つけ出し、それを満たすこと」である。
企業の命運を左右する「基本的決定」は社長の専権事項。その決定に基づく「実施」は社員に任せ、さらに「実施の範囲内の小さな決定」も社員に委ねよ。
「経営計画」は、社長の未来像を実現するための「過程」と「具体策」の提示である。それは社員に「どこへ向かうのか」「なぜやるのか」を示す道しるべとなる。
2. 感想
「経営=お客様視点の価値創造」への原点回帰
- 本書は、経営とは社内を見ることではなく、外(市場)を見ることだと、明快に教えてくれます。これはドラッカーの「企業の目的は顧客の創造である」とも通じます。つい社内の効率や管理に意識が向きがちな経営者に対して、一倉氏は繰り返し、「お客様が何を求めているか」に焦点を合わせるよう強く促します。つまり、経営とは、社内活動の管理ではなく、市場で勝つための仮説と検証の連続であるというメッセージに他なりません。この視点を見失った企業が、いくら内部統制を整えても、競争力を持つことはできない。これは、現代経営に深く刺さる原則です。
「決定」と「実施」を混同しない社長の構え
- 一倉氏は、「基本的決定」と「実施」を厳密に区別すべきだと説いています。の区別が曖昧になると、社長が現場に口を出し、社員が思考停止に陥ります。社長の仕事は「決めること」。社員の仕事は「決まったことを実行すること」。この整理がなされることで、組織は迷わず動き、スピードが出ます。逆に、社長がやり方にまで踏み込み、社員の判断や裁量を奪うと、現場力も、成長意欲も、創意工夫も削がれてしまうのです。この「決める」と「任せる」のバランスは、今なお多くの中小企業で曖昧なままです。だからこそ、本書の指摘は非常に実践的で鋭いのです。
「経営計画」は社長の未来の物語である
- 一倉氏が強調するのは、「経営計画は数字ではなく、社長の構想そのものである」という考えです。これは、単なる予算書や工程表ではなく、「わが社はどこに向かい、なぜそこへ行くのか」を語るストーリーであるべきだということです。そしてその構想が社員に伝わっていなければ、どれだけ立派な計画も「机上の空論」に終わるという現実を突きつけます。未来像→過程→具体策という流れを社長自身の言葉で語れるかどうか。それこそが、計画が「絵に描いた餅」になるか「行動の指針」になるかの分かれ道なのです。
3. この言葉の活かし方
顧客起点に立ち戻る:「お客様の要求」を見つけ出す習慣を仕組みにする
具体的な活かし方
• 営業・カスタマー対応チームの声をもとに、改善案ではなく、「新たな価値提供の仮説」を議論する。
実践例
住宅設備会社にて、既存顧客への点検時に「使いにくいと感じる箇所」を雑談ベースでヒアリングし、そこから新たなリフォームメニューの仮説を立案し、商品化。
決めて、任せる:「社長の決定」と「社員の判断」を明確に線引きする
具体的な活かし方
• 「社長が決めるべきこと」「社員が考えるべきこと」を文書化して共有。
• 役職者には、「意思決定支援ツール(意思決定ガイドライン)」を配布し、権限の境界を明確に。
実践例
飲食業において、商品開発の方向性(例:「健康志向」「時短調理」)は社長が定めるが、レシピや調達先、販売方法などは店舗責任者に完全に任せて運用。
未来像を言語化する:「経営計画」を物語として語る
具体的な活かし方
• 社員説明会では、「ビジョンを一枚の図解」で表現してから、数字に落とし込む。
実践例
製造業において、3年後に「地域No.1の短納期対応企業になる」という構想を掲げ、1年目:納期ヒアリングの仕組み化 → 2年目:工程の見える化 → 3年目:AIスケジューラー導入と展開、という過程を共有。
4.まとめ
一倉定の社長学:経営戦略は、経営者が何に集中し、何を手放すべきかを教えてくれる、まさに「社長の教科書」です。
• 「基本的決定」は社長の責任、「実施と小さな決定」は社員に任せる。
• 「経営計画」は数字ではなく、「社長の未来構想」そのものである。
この原則を土台に、自社の方向性と組織の機能を一致させることが、ブレない企業、そして利益の出る経営へとつながっていきます。「経営とは、戦略を語ることではなく、戦略を遂行する人と未来を信じること」。この一倉哲学を、経営の現場で実践する一歩を、今ここから始めましょう。
5.「私の読書メモ」で紹介した本
《新装版》第1巻 経営戦略 (一倉定の社長学)(Amazon)
事業構造を根本から強化する最重要な戦略の立て方 「自然に高収益があげられる」事業構造に、わが社をどう築くか── 事業構造を根本から強化する最重要な戦略のたて方と、社長の仕事の 核心を衝撃的に説く。 〝経営のバイブル〟と定評のあった旧版「経営戦略・利益戦略」に、 まったく新たに「不況期の戦略」をはじめ戦略策定・実施の四つの章と 最新事例を大幅に追加。 〈まえがき抜粋〉 いうまでもなく、戦略とは〝戦ずして勝つ〟あるいは〝戦ずして優位に立つ〟 ための事業構造の変革であり、それによって自然に高収益を生むことができる ような体制を実現することである。 経営戦略は常に先手をとることによって大きな効果を発揮する。しかも、そ の戦略は、そのごく一部を除いて敵はなかなか気付かないし、気付かれても反 撃が難しい場合が多い、という誠に安全度の高いものである。
日曜の朝が楽しみになる。名著を通じてビジネスの知見を探究する読書会です。変化の激しい時代だからこそ、「賞味期限の短い、誰もが手にする本」ではなく、「時を超える本」を一緒に味わっていきましょう。毎月1回、日曜日に定期開催しています。
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