語彙は人の何倍も知っていた方がいいが、覚えたあとは忘れちゃいなさいと言っている。
ハウツーで詩はかけない。
ハウツーでかけることは、ものすごく浅いこと。
(松本 隆)
佐野元春のザ・ソングライターズ、今回のゲストは作詞家の松本隆(パート2)でした。
前回は、はっぴいえんど時代から解散、作詞家へ転身について自らの歩みについての話。
今回は松田聖子プロジェクトへの関わりから松本流ソングライティングについて。
ザ・ソングライターズ3人目のゲストになりますが、個人的には一番面白かった内容でした。
松本隆といえば、細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂と結成したはっぴいえんども有名ですが、
私はリアルタイムで聞いていた世代ではないので、
ヒット曲を量産し続ける売れ子作詞家というイメージを持っています。
今回の3回で歌を自分のものにするという天才肌の松田聖子のエピソードや、
ハートのイアリングの作曲者のHollandRose(佐野元春)の話しなど、
見所満載でしたが、私としては冒頭の言葉に注目しました。
これは佐野氏が「作詩には感性より技術や経験が重要なのか」という問いかけに
答えた言葉、松本流ソングライティングの秘訣が出ている部分ではないでしょうか。
テクニックも高いほどよい、語彙もあった方がよい。
でも、ライティングの時点で忘れろなんだそうです。
作詩は、ハウツーだけで心理描写までかくことはできない。
作者の生き方、中身が問われるのだと。
実際には、作詩の技術や語彙の豊富さは、作詞家にとっては当たり前のものです。
ただ、それだけはでいい歌詞がかけるわけではない。
それを「忘れろ」とは、技巧に走っても人の心には届かない、
そういう詩を書いても大衆に見透かされてしまうということを言っているのでしょうね。
日本を代表する作詞家の発する重みのある言葉です。
番組の最後では、「もう作詞家はやめたい」といっていましたが、たぶん本音なのでしょう。
むしろ、日々、それだけの濃度で仕事に取り組んでいるから
ヒット曲という結果がついてきて、息の長い活動につながっているのでしょうね。