「聴けていない営業」が、提案で負ける理由ーー「わかったつもり」をやめた瞬間、商談の質が変わる

顧客の言葉には、表と裏がある
「検討します」を結論として扱うと、商談は止まる
親切のつもりで、答えを急ぐとズレる
8割の営業ができていない「曖昧発言を拾う動作」
次の商談で試す「3秒」と「要約」
提案営業で成果が出ない原因を、「質問の質」や「提案書の出来」に求める人は多いです。
しかし、もっと手前に決定的な差が出る場所があります。
それが、「聴き取り」です。
顧客の言葉を、こちらは聞いている。
でも実際には、相手の返事を受け取る前に、頭の中で次の質問や次の説明を組み立て始めてしまう。
この瞬間、耳は相手に向いているようで、意識は自分の内側に戻っています。
せっかく良い質問を投げても、
返事をじっくり聴かずに次の質問を考え始める。
この癖があると、提案の精度は上がりません。
理由は単純で、顧客理解が浅いまま提案に入ってしまうからです。
顧客の言葉には、表と裏がある
顧客の言葉には、
表に出ている意味と、その奥に隠れている意味があります。
しかも厄介なのは、顧客本人もその奥をうまく言語化できていないことが多いということ。
たとえば、顧客がこう言う場面があります。
「一度社内で検討します」
「ちょっと持ち帰ります」
「悪くないけど、今じゃないかも」
ここで営業がやりがちな失敗は、言葉を“結論”として扱うことです。
そして、曖昧さの理由や根拠を聴き出さずにスルーしてしまう。
提案営業に必要なのは「たくさん聞くこと」ではありません。
「正確に聴き取ること」です。
「検討します」を結論として扱うと、商談は止まる
顧客「一度、社内で検討します」
営業「承知しました。では見積だけ先にお送りしますね」
顧客「はい。お願いします」
この会話、表面は丁寧に終わっています。
でも、実際には“止まった理由”を一切拾えていない。
「検討します」の中身は、ほぼいつも複数です。
・社内の優先順位:今期は「人手不足対策が最優先」で、別案件は後回しになっている。
・過去の失敗:以前に似た仕組みを入れたが「現場が使わず定着しなかった」経験がある。
・予算の枠:「予算はあるが、今期は別プロジェクトで使い切っていて枠が残っていない」。
・比較対象:同じ目的で「他社の別案(より安い/既存取引先)」も並行検討している。
・導入後の負荷:導入後の「設定・教育・運用」が現場に乗るのが不安で止まっている。
それらが混ざったまま、まだ言葉になっていない状態が「検討します」なのです。
ここを聴き取らずに通過すると、次に起きるのは
沈黙か、失注か、値引き交渉になりやすい。
つまり商談が“決まらない形”に入っていきます。
親切のつもりで、答えを急ぐとズレる
もうひとつ、提案営業でよくある落とし穴があります。
相手に有益な情報を与えようとして、相手の課題について、すぐ答えを出そうとしてしまうことです。
顧客「現場が忙しくて、正直、そこまで手が回らないんですよね」
営業「それなら、こちらで全部やります。運用も丸ごと任せてください」
顧客「…うーん」
営業は親切のつもりです。早く答えを出して、役に立とうとしている。
でも顧客が言いたかったのは、「忙しい」という事実だけではありません。
忙しさの原因は何か。
何が一番詰まっているのか。
誰が困っているのか。
そこが見えていないまま解決策を出すと、顧客は「話が早い」とは感じません。
むしろ「わかってない」と感じることがあります。
提案営業では、正解を早く出すことよりも先に、相手の中にある未整理のものを整理してあげる必要があります。
その入口が「聴き取り」です。
8割の営業ができていない「曖昧発言を拾う動作」
営業研修で私が見てきた限り、8割の営業はこの“曖昧発言を拾う動作”ができていないように感じます。
では、なぜ拾えないのか。
能力不足ではありません。多くは「意識の向き」の問題です。
聴けない人は、顧客ではなく「自分の頭」を聴いている
聞き上手な人は、会話の最中にずっと判断しています。
いま自分の意識はどちらに向いているか。
自分の内側の声か。目の前の顧客の声か。
この「選択」と「集中」があるから、相手が発する一言一句だけでなく、声のトーンや表情、間といった非言語の部分まで拾えるようになります。
そうして初めて、「本当の意味で聞く」状態に入ります。
私は商談中に、自分へこう確認するようにしています。
いま、自分の意識はどちらを向いているか。相手か、自分か。
この確認ができるだけで、「わかったつもり」は大きく減ります。
曖昧発言を拾うための「確認の言葉」
提案営業で結果を変えるのは、派手な話術ではありません。
曖昧な発言が出たときに、そこを丁寧に止まれるかどうかです。
「いまの“検討”は、どの点の検討ですか」
「いま引っかかったのは、費用ですか、運用ですか、それとも社内の合意ですか」
「忙しい、の中身をもう少しだけ教えてください。何が一番ボトルネックですか」
この確認は、相手を追い詰めるためではありません。
相手の中にある“未整理の本音”を言葉に変えるための作業です。
この研ぎ澄まされた聴き方と、質の高い質問が組み合わさることで、相互理解が一気に深まります。
そして信頼関係は、提案書の出来より前に積み上がっていきます。
次の商談で試す「3秒」と「要約」
最後に、次の商談で試せる小さな実験を書いておきます。
相手が話し終わったら、すぐ返さずに3秒だけ待つ。
そのうえで「いま聞いたこと」を要約して戻して、合っているか確認する。
この2つだけで、拾える情報の質が変わります。
拾える情報が変われば、提案の精度が変わります。
精度が変われば、価格勝負から離れられます。
あなたは最近、顧客のどんな曖昧発言をスルーしてしまいましたか。
そしてそのとき、自分の意識は相手に向いていましたか。それとも自分に向いていましたか。









