コラム

限界を感じた上司からチームは動き出す

限界を感じた上司からチームは動き出す─どん底が育成のスタート地点になる理由

 

限界を感じた上司からチームは動き出す

「どん底にいることの良いところは、そこから上に行くしかないということだ。」―映画「 SING/シング」 より

【目次】
「もう、これ以上は悪くならない」と感じる瞬間
どん底とは、下がり切った「事実」のこと
「打つ手は無限」─その言葉が現実になる瞬間
管理職が迎える「育成のどん底」
どん底は、やり方を変えていい合図

 「もう、これ以上は悪くならない」と感じる瞬間

仕事をしていると、ふと心の中でこうつぶやく瞬間があります。
「もう、これ以上は悪くならないだろう」と。

数字が伸びない。
部下は思うように動かない。
指示しても反応が薄く、結局、自分がフォローに回る。
会議では前向きな言葉を並べながら、内心では「打つ手がない」と感じている。

多くのビジネスパーソンが、一度はこの状態を経験しています。
外から見れば何とか回っている。
けれど、内側では余裕が削られ、判断も守りに入っていく。

 どん底とは、下がり切った「事実」のこと

そんなとき、冒頭の言葉は少し違った角度から現実を照らします。

どん底とは、悲観の言葉ではありません。
それ以上、下がらない地点に立っているという事実です。

この状態に来ると、人はようやく不要なものを手放せるようになります。
失敗したらどう思われるか。
完璧にやらなければならないという思い込み。
自分が何とかしなければ、という責任の抱え込み。

それらを手放すシグナルなのかもしれません。

 「打つ手は無限」─その言葉が現実になる瞬間

ここで、よく使われる言葉があります。
「打つ手は無限」。

この言葉は、私が中小企業診断士の三次試験の実習の際、指導してくださった先生から教わったものです。
人生や仕事で困難な場面に直面したとき、今でもふと思い出すことがあります。

一方で、この言葉が軽く聞こえる場面があるのも事実です。
現場の管理職にとっては、「そんな余裕はない」と感じる状況も多い。

しかし実際には、打つ手が尽きたわけではありません。
これまでと同じ前提の中で考える手が、尽きただけです。

自分が動けば何とかなる。
正解を示せば人は動く。
失敗させなければ組織は安定する。

この前提を握りしめたままでは、選択肢は確かに限られます。
だから人は、「もう打つ手がない」と感じます。

けれど、どん底に立つと、その前提そのものが揺らぎます。

自分が全部やらなくてもいいのではないか。
失敗も、育成の一部なのではないか。
任せること自体が、次の一手ではないか。

前提が一つ外れただけで、見える景色は一気に広がります。
このとき初めて、「打つ手は無限」という言葉が現実の意味を持ち始めます。

 管理職が迎える「育成のどん底」

育成マネジメントの現場でも、同じ構図が見られます。

育てたいが、時間がない。
任せたいが、不安が勝つ。
信じたいが、裏切られるのが怖い。

その背景にあるのは、「これ以上、状況を悪くしたくない」という気持ちです。
だから指示を増やし、確認を重ね、結局また自分が動く。

しかし、本当に苦しくなるのは、
そのやり方を続けても何も変わらないと気づいた瞬間です。
ここが、多くの管理職にとっての「育成のどん底」です。

 どん底は、やり方を変えていい合図

どん底に立った管理職だけが、発想を切り替えられます。

失敗させない育成から、経験させる育成へ。
正解を教える関わりから、考えさせる関わりへ。
自分が動くマネジメントから、人が動く仕組みへ。

育成マネジメントは、余裕のある人の理想論ではありません。
限界を感じた人のための、現実的な選択です。

これ以上、自分が抱え込んでも良くならない。
そう腹をくくったとき、初めて
「任せる・育てる・信じる」という選択肢が現れます。

どん底は、終わりではありません。
打つ手が尽きた場所ではなく、
打つ手の考え方を変えていいと気づく地点です。

もし今、あなたが
「もう打つ手がない」と感じているなら。
それは、上に行く準備が整った合図かもしれません。

「どん底にいることの良いところは、
そこから上に行くしかないということだ。」

次の一歩は、大きな改革でなくていい。
一つ任せてみる。
一つ問いを投げてみる。
一度、信じて見守ってみる。

その積み重ねが、
現場での判断や動きを、少しずつ変えていきます。

 

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